UTEVA®レジンは、環境サンプル中のUの測定、他元素分析前のU除去、U、Pu、Amの連続定量、尿中のアクチノイドの測定、高レベル廃棄物中のアクチノイドの測定等、様々な分析に用いられてきました。

UTEVA®レジンに含まれる抽出剤ジアミルアミルホスホン酸（DAAP、Figure 1）は、アクチノイド元素のニトラト錯体を抽出します。これらの錯体の形成は、サンプル溶液内の硝酸濃度によって促進されます。そのため、硝酸濃度が高くなるとアクチノイドの抽出率も向上します。Figure 2は、分配係数k'値（ピーク最大値に対するFCVに相当する抽出率の尺度）と硝酸濃度との関係を示しています。

それぞれの四価アクチノイドとU（Ⅳ）の硝酸溶液からの抽出率は、非常に似ていることが分かります。硝酸濃度が5Mを超える場合は、すべて強い保持率（分配係数k'>100）を有します。一方で、Amはいかなる硝酸濃度の場合も保持されません。

Figure 3は、UTEVA®レジンによるNp（Ⅳ）、Th（Ⅳ）、U（Ⅵ）の保持における塩酸の影響を示しています。4～6Ｍ塩酸の範囲でＵとThのk’値が大きく異なるため、硝酸溶液においてThとUがレジンに保持された場合に、後からThを選択的に溶離することが可能です。Thを完全に溶出するために、塩酸にシュウ酸を付加することがよくあります。シュウ酸はThと強い錯体を形成しますが、UTEVA®レジンのＵ（Ⅵ）保持における影響は極わずかです。

Figure 2のデータから、Uは比較的少ない量の極希薄な硝酸（例：0.01～0.05M）を用いて、UTEVA®レジンから効率的に溶離できることを示しています。しかし実際には、1Mまでの塩酸がUを溶離する上でさらに効率的です。塩酸濃度が1Mまでは、定量的にU（Ⅵ）を溶離することが示されています。充填済の2mLカラムまたはカートリッジに対して、塩酸15mLが十分な量となります。

Figure 2および3で報告されたデータは、Horwitz氏らが行ったUTEVA®レジンのバッチ実験の結果です。Eichrom社の製品は、同社が公表している分析法を確実に行うための設定規格を満たしています。

高濃度のマトリックス元素が存在すると、UTEVA®レジンによる分離を正しく行えない可能性があります。Figure 4および5は、2M硝酸からのNpとUのそれぞれの保持に対する特定の多原子陰イオンの影響について示しています。Np（Ⅳ）の保持への影響は、U（Ⅳ）に対する影響よりも大きいことにご留意ください。Thについては、これらの陰イオンによってNpと同様の影響を受けることが実際に観察されました。

リン酸は、様々な生体サンプルや環境サンプルには普遍的に存在するので、その影響は最も関連性があります。幸い、サンプルマトリックスにAlを加えることで、この問題を解消することができます。リン酸陰イオンは四価アクチノイドと容易に結合します。このリン酸結合体はDAAPによって抽出されることはありません。Alを付加すると、効果的にリン酸と結合し、Np（またはTh）抽出に対するそれらの干渉を防ぐことができます。リン酸への影響を弱めるために、1M硝酸アルミニウムを加える分析法もあります。高濃度のリン酸を含むサンプルの場合、大量の硝酸アルミニウム/硝酸を充填すると、リン酸が希釈され、付加したAlがリン酸と結合するために、UTEVA®レジンによるTh（Ⅳ）およびNp（Ⅳ）の抽出率を向上させることができます。

UTEVA®レジンにおける理論上のＵ（Ⅵ）の最大抽出量は、1mLレジンベッドあたり50mgです。実際には、この最大抽出量の20%、つまりレジン1mLあたり10mgを上回ることは推奨されていません。これは、2mLの充填済カラムの場合に20mgのUが抽出可能ということになります。UTEVA®レジンのベッド（層）密度は0.39g/mLです。

Horwitz, E.P., et al, Separation and preconcentration of uranium from acidic media by extraction chromatography, Analytica Chimica Acta, Vol.266, pp. 25-37(1992) (HP392)