TRUレジン
TRUレジンは、トリブチルリン酸(TBP)に溶解したoctylphenyl-N,N-di-isobutylcarbamoylphosphine oxide(CMPO)を使用したレジンです。
Figure 1はCMPO分子を示しています。TRUレジンのベッド密度は約0.37g/mLであり、レジン1mLに対して2mg、充填済2mLカラムに対して4mgのAmの抽出が可能です。この数値は、レジンの理論上の最大抽出量の20%を意味しています。
Figure 2は、TRUレジンにより硝酸溶液から抽出された様々なアクチノイド元素について示しています。y軸の分配係数k’は抽出量を示し、クロマトグラフィーカラムのピーク最大値に対するフリーカラムボリューム(FCV)の数に相当します。FCVはカラムの隙間の尺度(つまり空隙容積)を意味します。数値が100以上の場合は抽出力が強いこと、1~50の場合は抽出力が弱いことを表します。
ここで紹介されているデータは、アルゴンヌ国立研究所のHorwitz氏らにより発表されたもので、試験用のTRUレジンが用いられています。Eichrom社製品は、同社が公表している分析法を確実に行うための設定規格を満たしています。
四価アクチノイドに対してカラムは極めて高い保持力を示し、2Mを超える硝酸濃度において分配係数k’ 値は10E4~10E6です。U(Ⅵ)は約1桁分配係数k’ 値が低くなります。Am(Ⅲ)の分配係数k’ 曲線は、硝酸の濃度が1~5M の範囲で約100 FCVで平衡状態に達します。Pu(Ⅲ)の挙動はAmと同様で、Np(Ⅴ)はどの硝酸塩濃度においてもかなり低い保持となることにご注意ください。
Figure 3は、塩酸におけるアクチノイドの保持挙動を示しています。塩化物媒体内のAmに対するカラムの親和性が非常に低いため、TRUレジンからAm(およびPu(Ⅲ))を選択的に溶出することができます。
Figure 4~6は、TRUレジンのアクチノイド抽出時における、様々なマトリックス成分が及ぼす影響についてです。Figure 4は、2M硝酸におけるAmの保持量(k’)に対する陽イオンと錯陰イオンの影響をプロットしたものです。記載の陽イオンの中で、CaとFe(Ⅱ)はTRUレジンのAm保持において影響がないことが分かりました。CaとFeは、多くの環境またはバイオアッセイサンプルに大量に含まれているため、これは特に有益です。
これらは沈殿ステップにおいて、キャリアとしてよく付加されます。Fe(Ⅲ)は、Am保持において重大でネガティブな影響を示しています。サンプルにFeが存在していることが疑われるとき、アスコルビン酸等の還元剤を付加して、すべてのFe(Ⅲ)をFe(Ⅱ)に完全に還元する必要があります。チオシアン酸アンモニウムはこの指標として使用することができます。Fe(Ⅲ)が存在すると深い赤色になり、Fe(Ⅱ)が存在すると無色になります。Am保持におけるFe(Ⅲ)の影響は、Fe(Ⅲ)がより強力に保持される高濃度の硝酸において大きくなります。
Al(Ⅲ)を付加すると、TRUレジンカラムによるAmの抽出率が向上します。これはAl(Ⅲ)陽イオンが溶液中で水和しやすいためです。溶液中の硝酸イオンの作用を高める効果があるため、CMPO/TBP抽出システムによって容易に抽出されるAm-ニトラト錯体を形成します。
Figure 4と5は、TRUレジンのAm保持において、一般的に存在する多原子陰イオンの影響が比較的少ないことを示しています。しかし、四価アクチノイドの保持にあたっては、重大な悪影響を及ぼします。Figure 5ではNpの保持の影響のみ示していますが、同じ条件における他の四価アクチノイドの挙動は類似しています。Puの曲線はNpの曲線とほぼ同じです。一方、Thの曲線は平行で、その値は1桁程低くなります。
幸い、NpとPuはその十分高い保持力から、硫酸やリン酸が比較的高濃度(0.5Mまで)であっても、Eichrom社が公表している分析法の条件下で破過は起こりません。TRUレジンでThを分離する場合は、リン酸や硫酸濃度の高いサンプルには注意を払う必要があります。硫酸アルミニウムを加えることで、リン酸がAlと優先的に結合してThにほとんど影響を与えないため、マトリックス効果を減少させることができます。
Figure 6は、四価アクチノイドの場合にシュウ酸の影響は重大で、CMPO/TBP溶媒システムによって抽出されないシュウ酸錯体を形成しやすいことを示しています。Uの保持の場合、0.1Mまでのシュウ酸には大きな影響を受けません。このため、シュウ酸塩溶液を使用することで、Uを溶出させることなくTRUレジンから四価アクチノイドを選択的に溶出することができます。
下のTable 1は、2M硝酸(FCV 1~30)と0.05M硝酸(FCV 31~40)において、TRUレジン上に存在するいくつかの元素の溶出挙動を示しています。
参考文献
E. P. Horwitz, R. Chiarizia, M. L. Dietz, H. Diamond, and D. Nelson, “Separation and Preconcentration of Actinides from Acidic Media by Extraction Chromatography,” Analytica Chimica Acta, 281 (1993) 361-372. (HP193)
取扱仕様
TRU レジン | |||
粒 径 | 容 器 | 入 数 | 商品番号 |
100 ~ 150 µm |
ボトル |
25g |
TR-B25-A |
50g | TR-B50-A | ||
100g | TR-B100-A | ||
200g | TR-B200-A | ||
カラム(2mL) |
50個入 |
TR-C50-A | |
カラム(5mL) | 20個入 | TR5-C20-A | |
カラム(10mL) | 20個入 | TR10-C20-A | |
50 ~ 100 µm | ボトル | 25g | TR-B25-S |
50g | TR-B50-S | ||
100g | TR-B100-S | ||
200g | TR-B200-S | ||
カートリッジ(1mL) | 50個入 | TR1ML-R50-S | |
カートリッジ(2mL) | 50個入 | TR-R50-S | |
20 ~ 50 µm | ボトル | 10g | TR-B10-F |